〜豪雨犠牲の親子〜

激流も断てなかった「絆」

8月15日9時4分配信 読売新聞
 台風9号の影響で9日夜から西日本を襲った豪雨は、幼い子どもを持つ家族をのみ込んだ。死を覚悟しながら、最後まで家族の絆(きずな)を信じた親の姿が、周囲の証言で、明らかになってきた。

 家族4人で避難中に死亡した兵庫県佐用町本郷の会社員井上利則さん(40)一家。井上さんと長男の小学1年、唯人(ゆいと)君(7)は、10日、自宅から南東約6キロの同町円光寺の田んぼで、寄り添うようにして見つかった。

 「お父さんの腕と子どもさんの腰は、ロープできつく結ばれていたんですよ」

 井上さんの弟、英二さん(36)は、遺体と対面した際、担当警察官からそう聞かされたという。英二さんは「たとえ流されたとしても、子どもと絶対離れないように工夫したに違いない」と唇をかんだ。

 井上さんは、岡山県のゴルフ場の支配人。早朝から深夜まで働く毎日だったが、休日は妻子を連れ、遊園地やお祭りなどに出かけた。

 「いつも寝顔しか見てやれんから、休みの日はしっかりと遊んでやるんや」

 井上さんは英二さんに対し、そう話していた。

 井上さんの妻、さなえさん(32)は11日に発見された。その前日には長女の保育園児、優里(ゆうり)ちゃん(4)も近くで見つかった。激流の中、身を寄せ合っていたとみられる。2人の子の顔には、かすり傷もほとんどなかったという。さなえさんが持ち出した黒いバッグが遺品となった。中には、唯人君と優里ちゃんの着替えの服が詰まっていた。
最終更新:8月15日9時4分

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